調停離婚

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調停離婚

協議離婚が成立しない場合、次のステップとして調停離婚を検討する必要があります。

調停離婚には各種メリット及びデメリットが存在するところ、調停の申立てにあたっては調停離婚のデメリットを理解した上でこれに対応することが重要です。

本ページでは、調停離婚の内容や特徴、進め方について解説いたします。

1 調停離婚とは

1.1 日本における離婚の状況

協議離婚ができない場合にはその他の5種類の方式の離婚(調停離婚、審判離婚、和解離婚、認諾離婚、裁判離婚)を検討しなければなりませんが、調停前置主義(家事事件手続法第257条第1項)が採用されているため、その他の5種類の方式で離婚するにはまず家庭裁判所に離婚の調停を申し立てる必要があります。

離婚の調停は、原則として裁判官(家事調停官)1名及び家事調停委員2名の3名で構成する調停委員会により処理されるのですが、基本的には2名の家事調停委員が当事者の話を聞くことで手続が進みます。
手続を進めた結果、当事者が離婚条件等について合意できた場合には調停離婚が成立します。

もっとも、調停はあくまで当事者間の合意により解決を目指す手続きであるため、最終的に当事者が合意できない場合には調停離婚は成立しません(家事事件手続法第268条第1項)。

なお、離婚の調停が不成立となった場合、付随して申し立てた財産分与や年金分割の調停は終了することになりますが、離婚の調停とは別事件として申し立てた婚姻費用や面会交流の調停については自動的に審判手続に移行することになります(家事事件手続法第272条第4項、別表2)。

1.2 審判離婚

離婚の調停が成立しない場合、家庭裁判所は、職権で調停に代わる審判出すことが可能です(家事事件手続法第284条)が、調停に代わる審判により成立する離婚を審判離婚といいます。

調停に代わる審判は、当事者が2週間以内に異議申立てをした場合には効力を失う(家事事件手続法第286条第2項、第279条第2項、第286条第6項)ため、利用される場面は限定的です。

実務的には、当事者間で合意はできないものの意見の相違が僅かであるため家庭裁判所の審判により終局的に解決できる可能性がある場合や当事者本人が離婚の調停期日に出頭できない場合などに調停に代わる審判が利用されている状況です。

離婚調停、離縁調停における調停の成立方法

離婚調停や離縁調停については、本人の意思確認が重要であるため電話会議や調停条項案の書面による受諾という手続では調停を成立させることができません(家事事件手続法第268条第2項、第54条第1項、第270条第2項)。

そのため、離婚や離縁については、原則として当事者の出頭がなければ調停が成立しないこととなります。
そこで、実務上、当事者が裁判所に出頭できない場合には調停に代わる審判という方法が広く利用されています。

2 調停離婚の特徴

2.1 配偶者と直接話し合う必要がない

協議離婚をするためには配偶者と話合いを行う必要がありますが、離婚の調停手続では原則として配偶者と対面せず調停委員に話をすることになります。
そのため、配偶者に対する恐怖心が強いなどの理由で配偶者と話合いができない場合にも離婚や離婚条件の話を進めることができるというメリットがあります。

2.2 裁判所が関与することにより一定の公正さが担保される

離婚調停には裁判所が関与するため、協議離婚の場合に比べ一定の構成さが担保されるという特徴があります。
また、当事者にも調停手続では公正さが一定程度担保されているという信頼があることから、調停手続の方が当事者間での話合いを行う場合よりも離婚条件の合意が成立しやすい傾向にあります。

2.3 調停委員会への対応が必要

家事調停委員には弁護士が選任されていることもあるのですが、法曹資格を有しない方が選任されていることの方が多い状況です。
そのためか、家事調停委員の話や裁判所が提示する条件が必ずしも法的に合理的なものとはなっていないことがあります。

また、離婚調停はあくまで当事者の合意を目指す手続であることから、家事調停委員が当事者を強く説得することは珍しくありません。
その際、当事者としては家事調停委員が言うのであるからそれが正しい解決だと考え調停を成立させたものの、事後的に弁護士に相談すると必ずしも合理性のある解決内容とはなっていなかったことが判明することもあります。

そのため、調停委員会への対応として、家事調停委員の話や調停委員会が提案する離婚条件などを安易に受け入れるのではなく、その妥当性等を自ら検討した上で手続を進めていくことが重要といえます。

2.4 調停離婚は夫婦の合意がなければ成立しない

調停離婚は当事者である夫婦が合意しなければ離婚が成立しません(家事事件手続法第268条第1項)。
そのため、配偶者が離婚自体や離婚条件を拒否している場合などには調停離婚を成立させることができず、裁判手続により解決することを検討する必要が出てきます。

2.5 解決までに時間がかかる可能性がある

離婚調停は、調停の申立てから初回期日までに約1か月前後の期間が空く上、2回目以降の期日についても約1~2か月程度に1回という頻度で開かれるというのが通常です。

その結果、スムーズに話合いを進めることができた場合でも調停離婚が成立するまでに数か月かかることが少なくなく、1年以上かかることも珍しくありません。

そのため、調停離婚には解決までに時間がかかる可能性があるというデメリットがあるといえます。

3 調停離婚の進め方

調停前置主義が採用されているため、協議離婚が困難な場合にはまずは離婚調停を申し立てるほかありません。

もっとも、離婚調停を申し立てる場合でも、調停委員会への対応が必要(2.3)、夫婦の合意がなければ離婚が成立しない(2.4)、解決までに時間がかかる可能性がある(2.5)というデメリットへの手当を検討しておく必要があります。

具体的には、①あらかじめ法的な見通しを基に戦略を立案しておき、調停委員会の話や提案内容にかかわらず合理的で、かつ納得のいく内容の解決を目指す、②離婚原因が存在する場合には調停を不成立にした上で離婚裁判を提起することを検討する、③各調停期日の中で争点や準備事項、進行に関する意見等を明示することで、調停手続が可能な限りスムーズに進むような段取りを取るなどが考えられます。