誓約書を作成した後に慰謝料を80万円に減額できたOさんの事例

慰謝料を減額した事例

慰謝料を減額した事例

誓約書を作成した後に慰謝料を80万円に減額できたOさんの事例

ご相談者Oさん

当事者:慰謝料を請求された
性別:男性
職業:会社員

相手職業:パートタイマー(Oさんの妻)
慰謝料額:80万円(320万円の減額)
解決方法:裁判

※案件や依頼者様の特定ができないように内容を編集しております。

状況

Oさんは妻と結婚して十数年間経つのですが、結婚後に妻とは一度も性交渉を持てない状況が続いていました。
そんな中、Oさんは親しくなった女性と交際することとなったものの、すぐに妻に女性との関係がバレてしまいました。

妻は、自身の実家にOさんを呼び出し、自身の親族と一緒に数時間にわたってOさんを責め続けた上、慰謝料を支払うことを記載した誓約書などの作成を求めました。
その結果、Oさんは、最終的に妻に対し慰謝料300万円を支払うとの内容の誓約書などを作成してしまいました。

その後、Oさんと妻は別居したのですが、妻は、弁護士に依頼した上でOさんに対し慰謝料として誓約書に記載の金額を上回る400万円を請求してきました。

Oさんは、妻からの請求に対し、慰謝料等を可能な限り減額したいと考え弁護士に慰謝料の減額交渉等をご依頼されました。

弁護士の活動

弁護士は、妻側に対し、①慰謝料として300万円を支払う旨の確定的な合意は成立していない、②仮に慰謝料を支払う旨の確定的合意が成立しているとしてもOさんの意思表示には瑕疵があり無効である、③仮に慰謝料を支払う旨の確定的合意が成立しているとしても公序良俗違反(民法第90条)により合意が無効である、との反論を行いました。

そして、合意が無効であることを前提として、話合いで解決できる場合には100万円までであれば支払可能との回答を行いました。

これに対し、妻は、上記条件での和解に応じず、Oさんと相手の女性に対し慰謝料請求訴訟を提起しました。

弁護士は、訴訟の中でも上記①~③の主張などを行ったところ、最終的に「Oさんが妻へ慰謝料として80万円を支払う。」との内容での和解を成立させることができました。

ポイント

1 誓約書の作成と合意の成立

誓約書とは、一方当事者が約束する内容を記載した上で他方当事者へ交付する書面を指します。

不倫慰謝料について合意する場合、双方当事者が署名等をする合意書や債務承認弁済契約書などの書面を作成するほかに、当事者の一方のみが署名等を行う誓約書を作成するということがあります(とくに双方当事者が弁護士に依頼していないという場合には誓約書が作成されることが少なくありません。)。

誓約書の法的性質については争いがあるところですが、一方当事者が誓約書を交付することにより誓約書記載内容の合意の申込みの意思表示を行い、他方当事者が誓約書を受領することにより承諾の意思表示を行うことで合意が成立すると考えることが可能です。

2 誓約書を作成した後に合意の有効性を争うポイント

一方当事者が慰謝料を支払う旨の誓約書を作成しこれを他方当事者へ交付したという場合、少なくとも形式的には合意が成立したと判断される場合がほとんどです。

そのため、誓約書に記載した慰謝料の支払義務等を争うためには、基本的には①合意が確定的なものではなかった、②合意の成立プロセスに問題があるため合意が無効、③合意内容に問題があるため合意が無効、との主張及び立証を行うことにより合意の有効性を争う必要があります。

もっとも、合意が少なくとも形式的には成立している以上、当該合意が無効であることを前提に和解するというのは話合いではなかなか容易ではないため、裁判に移行する可能性が高くなる傾向にあります。

3 交渉の中での提示額と裁判になった場合の和解額

交渉の中で相手方に慰謝料の金額を提示する場合、裁判になったときの慰謝料額の見通しを踏まえつつ、裁判になった場合の時間や費用、裁判に移行することに関する依頼者様の御意向を考慮した上で提示額を決定します。

そのため、交渉の中で合意に至らず裁判になった場合には、裁判に要する時間や費用を考慮し、訴訟の中で和解する場合の条件を再検討することになります。

今回の場合、相手方がOさんのみではなく不倫相手の女性に対しても慰謝料請求訴訟を提起したということもありますが、裁判に要する時間や費用を考慮した上で和解可能な条件を訂正した結果、交渉の中での提示額よりも低い金額で裁判上の和解を成立させることが可能となりました。


※掲載中の解決事例は、当事務所で御依頼をお受けした事例及び当事務所に所属する弁護士が過去に取り扱った事例となります。