夫婦間での金銭授受等を理由に慰謝料を260万円減額したCさんの事例

慰謝料を減額した事例

慰謝料を減額した事例

夫婦間での金銭授受等を理由に慰謝料を260万円減額したCさんの事例

ご相談者Cさん

当事者:慰謝料を請求された
性別:女性
職業:医療従事者

相手職業:無職
慰謝料額:40万円(260万円減額)
解決方法:代理交渉

※案件や依頼者様の特定ができないように内容を編集しております。

状況

Cさんは、職場の同僚男性から交際を申し込まれ、当初はこれを断っていたものの男性から何度も交際を申し込まれるうちに男性と交際を開始することになりました。

しかし、Cさんが男性と交際を開始して約2か月が経過した頃、実は男性がCさんと交際して間もなく別の女性と結婚していたという事実が判明しました。

Cさんはショックを受け一度は男性との連絡を絶ちましたが、男性から「妻と別居しており離婚するから交際を継続して欲しい。」との説得を受けたことから、男性との交際を継続することにしました。

その後、男性は妻へ300万円を支払った上で離婚する一方でCさんと男性は交際を解消したのですが、Cさんが男性との交際を解消して約1年が経過した頃、Cさんの元に男性の元妻の代理人弁護士から手紙が届きました。
その手紙には、男性の元妻がCさんに対し不倫慰謝料として300万円を請求するとの内容が記載されていました。

上記手紙への対応に苦慮したCさんは、慰謝料の減額等について元妻の弁護士との交渉を弁護士に任せたいと考え当事務所にご依頼されました。

弁護士の活動

まず、弁護士は、元妻側に対し、①Cさんが男性と交際した経緯や男性が元妻と別居しており離婚すると告げていたこと等を指摘した上で、そもそもCさんには慰謝料の支払義務が発生しないか、発生したとしても極めて低額にとどまる旨の主張を行いました。
また、弁護士は、②男性が離婚に際し元妻に対し300万円を支払っている点について、当該300万円のうち大部分が慰謝料の性質を有するため、仮にCさんに慰謝料の支払義務が生じるとしてもすでに法的には慰謝料がすべて弁済ずみであると主張しました。

これに対し、元妻側の弁護士は、男性が元妻に対し支払った300万円は解決金名目で支払われたものであるところ、実質的には財産分与や婚姻費用の趣旨で支払われたものであって慰謝料の性質を有さないとの反論を行ってきました。

上記反論に対し、当事務所の弁護士は、男性夫妻の財産分与の本来的な見通し等を指摘した上で、男性が支払った300万円の大部分が慰謝料にあたることは明らかである旨の再反論を行いました。

その結果、最終的にCさんが元妻に対し40万円を支払うとの内容で和解を成立させることができました。

ポイント

1 交際相手が既婚者だと知らなかった場合

不倫を理由に慰謝料等を請求するためには、①不倫が不法行為にあたること、②①について故意または過失があること、③①により損害が発生したことが必要です。

このうち、②故意または過失については、その内容に関し法的に争いがあるところではありますが、少なくとも交際相手が「既婚者であることを認識していたか、又はこれを認識しなかったことに過失がある」ことが必要となります。

そのため、交際相手が既婚者だと知らずに交際を続けていた場合、既婚者だと知らなかったことに過失がない限り、交際相手の配偶者に対し慰謝料の支払義務を負わないことになります。

2 交際相手が既婚者だと知った後に交際を継続した場合

一方、当初は交際相手が既婚者だとは知らなかったものの途中で交際相手が既婚者だと認識した場合、その後も交際を継続すると②故意が認められ、交際相手が既婚者だと認識した時点以降の不倫について慰謝料の支払義務が発生することになります。

そのため、法的責任という観点からは、独身であると認識していた交際相手が既婚者であると判明した場合には、その事実を明らかにした上で速やかに交際を解消すべきということになります。

3 離婚時における夫婦間の金銭の授受の法的性質

不倫の慰謝料は、不倫を行った複数当事者が被害者に対して連帯して支払う義務があるところ(民法第719条第1項)、不倫の一方当事者が被害者に対し慰謝料を支払った場合には不倫の他方当事者との関係でも慰謝料がすでに弁済されたと評価されます。

そのため、既婚者と交際したことを理由に当該既婚者の配偶者から慰謝料請求を受けた場合には、既婚者夫婦間での金銭のやり取りの有無を確認することが重要です。

なお、離婚時に夫婦間で金銭をやり取りする場合、「解決金」などの名目で金銭の授受が行われることが少なくありません。
しかし、「解決金」などの名目で金銭がやりとりされていた場合でも、実態について詳細に主張立証をしていくことで夫婦間で授受された金銭が実質的に慰謝料の性質を有することを明らかにすることができる可能性があります。

4 交際相手に対する慰謝料請求の可能性

交際相手から独身と騙されていた場合、交際相手に対し貞操権侵害を理由として慰謝料請求を行うことができる可能性があります。

もっとも、交際相手が既婚者だと認識した後も交際を継続した場合、その他の状況次第では貞操権侵害の宥恕を認めたとして慰謝料請求が否定される可能性がある点には注意が必要です。

5 本件の解決のポイント

本件では、裁判になった場合に慰謝料請求が認められる可能性の高低、仮に慰謝料請求が認められる場合の慰謝料額の見通し及び裁判になった場合の時間や費用等を考慮し、最終的に40万円という金額で和解を成立させることとなりました。


※掲載中の解決事例は、当事務所で御依頼をお受けした事例及び当事務所に所属する弁護士が過去に取り扱った事例となります。