4月1日生まれはなぜ「早生まれ」?|学年の区切りと法律的根拠を弁護士が解説
Question
Q1 4月1日生まれの子どもは「早生まれ」になるの?
A1 はい、4月1日生まれのお子様は「早生まれ」にあたり、一つ上の学年に入学します。
Q2 どうして4月1日生まれが早生まれになるの?「初日不算入」は関係ある?
A2 年齢の数え方(年齢計算)で「生まれた日を1日目として数える」ため、4月1日生まれのお子様は、法律上「3月31日の終わり」に一つ年を取ります。これが学年の区切りと関係しています。「初日不算入」という民法の原則は、年齢計算には適用されません。
Q3 学年がどう決まるのか、法律的な根拠を知りたい。
A3 「年齢計算に関する法律」と「学校教育法」が主な根拠です。この記事で詳しく解説します。

1 「早生まれ」とは?
日本では、4月1日から翌年3月31日までが1つの学年(学校年度)とされています(学校教育法施行規則59条)。
一般に、同じ学年に属する人物のうち、1月1日以降に生まれた人を「早生まれ」と呼びます。
「早生まれ」は、学年の中で早く生まれたからそのように呼ばれるのではなく、生まれてから就学するまでが早いことから「早生まれ」と呼ばれています。
「早生まれ」の人は、同じ学年の中で遅く生まれており、生まれた時期に最大でほぼ1年の差があることから、とくに幼少期には体格や発達で「早生まれ」でない人との差が表れやすいといわれています。
実際、スポーツ選手には4月から6月生まれが多いデータもあるようです。
関連リンク
・「全国大会はわずか6.4%… 専門家が語る「早生まれ」の悪循環」|朝日新聞Webサイト
・「拝啓 少年野球に取り組む「早生まれ」のみなさま…いま諦めたら、もったいないぞ」|読売新聞オンライン
学校教育法施行規則
第59条
小学校の学年は、四月一日に始まり、翌年三月三十一日に終わる。
第79条
第四十一条から第四十九条まで、第五十条第二項、第五十四条から第六十八条までの規定は、中学校に準用する。
第104条
第四十三条から第四十九条まで(第四十六条を除く。)、第五十四条、第五十六条の五、第五十七条第一項、第五十八条から第七十一条まで(第六十九条を除く。)及び第七十八条の二の規定は、高等学校に準用する。
第39条
第四十八条、第四十九条、第五十四条、第五十九条から第六十八条までの規定は、幼稚園に準用する。
2 「4月1日生まれ」は早生まれ?法的根拠を解説
では、「4月1日生まれ」の人は早生まれになるのでしょうか?
学年が4月1日から翌年3月31日までとされていることに照らすと、4月1日生まれの人が学年で最も誕生日が早く、「早生まれ」ではないように思えますが、結論からいうと「4月1日生まれ」の人は「早生まれ」です。
「4月1日生まれ」の人が「早生まれ」である法的根拠は以下のとおりです。
①年齢は出生日から起算する(年齢計算に関する法律1項)。
②年齢の計算には民法143条が適用される(年齢計算に関する法律2項)。
③「子の満六歳に達した日の翌日以後における最初の学年の初め」(学校教育法17条1項)から小学校に入学する。
④①と②の結果、4月1日生まれの人は3月31日の満了(3月31日の24時)をもって法的に1歳年を取る。
⑤④の結果、4月2日生まれの人は生まれた年の7年後の4月1日が「子の満六歳に達した日の翌日以後における最初の学年の初め」となる一方、4月1日生まれの人は生まれた年の6年後の4月1日が「子の満六歳に達した日の翌日以後における最初の学年の初め」となる。
このように、「4月1日生まれ」の人は「早生まれ」にあたり、1月1日から4月1日に生まれた人が「早生まれ」にあたるといえます。
項目 | 4月1日生まれのAさんの場合 | 4月2日生まれのBさんの場合 |
---|---|---|
誕生日 | 2019年4月1日 | 2019年4月2日 |
満6歳になる日 | 2025年3月31日 24時 (誕生日の前日) | 2025年4月1日 24時 (誕生日の前日) |
小学校入学のタイミング | 2025年4月1日 (満6歳になってすぐの4月) | 2026年4月1日 (満6歳になった後の、翌年の4月) |
年齢計算に関する法律
1 年齢ハ出生ノ日ヨリ之ヲ起算ス
2 民法第百四十三条ノ規定ハ年齢ノ計算ニ之ヲ準用ス
民法143条
1 週、月又は年によって期間を定めたときは、その期間は、暦に従って計算する。
2 週、月又は年の初めから期間を起算しないときは、その期間は、最後の週、月又は年においてその起算日に応当する日の前日に満了する。ただし、月又は年によって期間を定めた場合において、最後の月に応当する日がないときは、その月の末日に満了する。
学校教育法第17条
1 保護者は、子の満六歳に達した日の翌日以後における最初の学年の初めから、満十二歳に達した日の属する学年の終わりまで、これを小学校、義務教育学校の前期課程又は特別支援学校の小学部に就学させる義務を負う。ただし、子が、満十二歳に達した日の属する学年の終わりまでに小学校の課程、義務教育学校の前期課程又は特別支援学校の小学部の課程を修了しないときは、満十五歳に達した日の属する学年の終わり(それまでの間においてこれらの課程を修了したときは、その修了した日の属する学年の終わり)までとする。
2 保護者は、子が小学校の課程、義務教育学校の前期課程又は特別支援学校の小学部の課程を修了した日の翌日以後における最初の学年の初めから、満十五歳に達した日の属する学年の終わりまで、これを中学校、義務教育学校の後期課程、中等教育学校の前期課程又は特別支援学校の中学部に就学させる義務を負う。
3 初日不算入(民法140条)との関係は?
民法140条では、「日によって期間を定めたときは、期間の初日は、算入しない。」旨が定められています(初日不算入)。
そのため、年齢計算に初日不算入が適用される場合、生まれた日の翌日から起算して1年後(例:4月1日の午前10時に出生した場合、翌年の4月1日の24時)に法的に1歳年を取ることになります。
しかし、年齢計算においては、初日算入(年齢計算に関する法律1項)とされているところ、法令に「別段の定めがある場合」(民法138条)として初日不算入の例外にあたります。
その結果、生まれた日から起算して1年後(例:4月1日の午前10時に出生した場合、翌年の3月31日の24時)に法的に1歳年を取ることとなります。
よくある誤解
4月1日生まれの人が「早生まれ」となる理由として、学年の初日である4月1日について初日不算入であり学年が4月2日から始まる結果、「4月1日生まれ」の人が学年で最も誕生日が遅くなるからと誤解されている方がおられます。
しかし、期間が午前0時から始まるときは初日を算入するところ(民法140条)、学年は4月1日の午前0時から始まることから、初日不算入を前提としても4月1日が学年の初日となります。
そのため、このような理解は誤りであり、正確には上記2で述べたとおり、年齢計算では初日が算入される結果、4月1日生まれの人は3月31日の24時に法的に1歳年を取るからというのが4月1日生まれの人が「早生まれ」となる理由です。
民法140条
日、週、月又は年によって期間を定めたときは、期間の初日は、算入しない。ただし、その期間が午前零時から始まるときは、この限りでない。
民法138条
期間の計算方法は、法令若しくは裁判上の命令に特別の定めがある場合又は法律行為に別段の定めがある場合を除き、この章の規定に従う。
関連記事:【弁護士が解説】初日不算入とは?民法における期間計算の基本とその例外
※本記事では「4月1日生まれの学年・早生まれの疑問点」について解説いたしました。
しかし、実際の事案では個別具体的な事情により法的判断や取るべき対応が異なることがあります。
そこで、法律問題についてお悩みの方は、本記事の内容だけで判断せず弁護士の法律相談をご利用いただくことをお勧めします。。