「1週間後」はいつまで?期間計算で損しないための民法のルール「初日不算入」を弁護士が解説

「本日より1週間以内にご返信ください」、「契約日から10日以内に手続きが必要です」

このような期間が定められている場面で、「結局、最終日はいつなの?」と迷った経験はありませんか?

実は、民法には期間を計算する際の基本的なルールとして「初日不算入の原則」というものがあります。このルールを知らないと、契約の期限を1日間違えてしまい、思わぬ不利益を被る可能性も。

この記事では、民法における期間計算の基本である「初日不算入の原則」とその例外について、弁護士が分かりやすく解説します。

1 初日不算入とは?期間の計算方法を解説

1.1 初日不算入とは?

日、週、年、月の単位で期間を定めたときは、午前0時に期間が始まるときを除き、即時に起算することはなく初日は算入しないのが原則です(民法140条)。
このように初日を算入せず、翌日から期間を計算することを初日不算入の原則といいます。

初日不算入が原則とされているのは、初日を算入すると期間に不足が生じてしまうからです。
たとえば、「1月1日の13時に、1月1日から1日間」という期間を定めた場合、初日を算入しない場合には1月2日の24時に期間が満了となる一方、初日を算入すると1月1日の24時に期間が満了となります。

そのため、この例では初日を算入してしまうと、実際には11時間しかないにもかかわらず1日が経過したと評価されることとなってしまいます。
そこで、初日を算入せず、翌日の午前0時から期間を計算することを原則とすることで期間の計算に不足が生じないように制度設計されています。

1.2 刑事事件や行政事件ではどうなる?

刑事事件の場合、時効期間の計算を除き初日不算入と定められています(刑事訴訟法55条1項)。

また、行政事件の場合、行政事件訴訟法7条により民事訴訟法における期間の計算方法が準用され、民事訴訟法95条は民法の期間に関する規程を準用しているため、結果として民法140条の初日不算入の原則が適用されることとなります。

関連法令

刑事訴訟法第55条
1 期間の計算については、時で計算するものは、即時からこれを起算し、日、月又は年で計算するものは、初日を算入しない。但し、時効期間の初日は、時間を論じないで一日としてこれを計算する。

行政事件訴訟法第7条
行政事件訴訟に関し、この法律に定めがない事項については、民事訴訟の例による。

民事訴訟法第95条
1 期間の計算については、民法の期間に関する規定に従う。

1.3 具体例での検討

①「1月1日の0時に、3日間」という期間を定めた場合
午前0時に期間が始まることから、1月1日を起算日とします(民法140条ただし書)。
そのため、1月3日の24時に期間は満了します。

②「12月30日の13時に、2日間」という期間を定めた場合
午前0時に期間が開始されないため初日不算入となり、12月31日を起算日とします。
そのため、1月1日の24時に期間が満了します。

ただし、元日である1月1日には取引をしない慣習があることが多いところ、このような慣習があるといえる場合には1月2日の24時に期間が満了することとなります(民法142条)

③「1月30日の13時に、1か月間」という期間を定めた場合
初日不算入により、1月31日が起算日となります。
そのため、2月30日の24時に期間が満了するように思われますが、2月は28日または29日までです。

このような場合、その月の末日である2月28日または29日の24時に期間が満了することとなります(民法143条2項ただし書)。

【補足】期間計算に関するその他の民法のルール
なお、初日不算入の原則以外に、民法では以下のとおり計算方法が定められています。

・期間は末日の終了をもって終了する(民法141条)。
・期間の末日が日曜日などの休日にあたる場合、その休日に取引をしない慣習があるときは末日の翌日に期間が満了する(民法142条)。
・週、月、年で期間を定めたときは、日に換算せずに暦に従って期間を計算する(民法143条1項)
・週、月、年の初めから期間を計算しない場合、最後の週、月、年における起算日に応答する日の前日に期間が満了する(民法143条2項本文)
・月又は年によって期間を定めた場合において最後の月に応答する日がないときはその月の末日に満了する(民法143条2項ただし書)。
・時間によって期間を定めたときは、即時に起算する(民法139条)。

関連法令

民法第138条(期間の計算の通則)
期間の計算方法は、法令若しくは裁判上の命令に特別の定めがある場合又は法律行為に別段の定めがある場合を除き、この章の規定に従う。

第139条(期間の起算)
時間によって期間を定めたときは、その期間は、即時から起算する。

第140条
日、週、月又は年によって期間を定めたときは、期間の初日は、算入しない。ただし、その期間が午前零時から始まるときは、この限りでない。

第141条(期間の満了)
前条の場合には、期間は、その末日の終了をもって満了する。

第142条
期間の末日が日曜日、国民の祝日に関する法律(昭和二十三年法律第百七十八号)に規定する休日その他の休日に当たるときは、その日に取引をしない慣習がある場合に限り、期間は、その翌日に満了する。

第143条(暦による期間の計算)
1 週、月又は年によって期間を定めたときは、その期間は、暦に従って計算する。
2 週、月又は年の初めから期間を起算しないときは、その期間は、最後の週、月又は年においてその起算日に応当する日の前日に満了する。ただし、月又は年によって期間を定めた場合において、最後の月に応当する日がないときは、その月の末日に満了する。

2 初日不算入の例外

民法140条本文の初日不算入の原則には例外も存在します。

2.1 午前0時から始まる場合

まず、期間が午前0時から始まるときは、初日を算入しても期間が短くなることはないため初日が算入されます(民法140条ただし書)。

2.2 法令に特別の定めがある場合の例外

民法138条では、「法令若しくは裁判上の命令に特別の定めがある場合又は法律行為に別段の定めがある場合」には初日不算入の原則の適用を排除することが明示的に定められています。

法令で特別の定めがある場合の例は以下のとおりです。

・年齢計算に関する法律1項(出生日から起算)
・戸籍法43条1項(届出事件発生の日から起算)
・特定商取引法9条1項(法律で定められた書面を受け取った日から起算)
・民法589条2項(消費貸借契約における利息について受領日から起算)

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2.3 判例法理による例外

判例法理により、初日不算入の原則の適用が排除されることもあります。

主な例としては以下のとおりです。

・不法行為に基づく損害賠償請求権に関する遅延損害金(不法行為時から起算、最高裁昭和37年9月4日第三小法廷判決・民集16巻9号1834頁)
・消費貸借契約における利息(最高裁昭和33年6月6日第二小法廷判決・民集12巻9号1373頁)

※なお、消費貸借契約における利息については、法改正(平成29年法律第44号)により民法589条2項で明文化されました。

2.4 合意による例外

「法律行為に別段の定めがある場合」(民法138条)、すなわち当事者間で初日不算入の原則の適用を排除する内容の合意をした場合には初日不算入の原則が適用されません。

具体的には、「〇月〇日から起算して2週間」などと合意する場合、初日から起算することが明示されていますので、初日が算入されることとなります。

3 【まとめ】期間計算で失敗しないための重要ポイント

本記事で解説した、期間計算の重要なポイントを改めて確認しましょう。

・日、週、月、年で期間を決める場合、原則として初日は数えず翌日からカウントします(初日不算入)。
・例外的に、期間が午前0時から始まる場合は初日もカウントします。
・期間の最終日が日曜・祝日などで取引をしない慣習がある場合は、休み明けの翌日に満了日がずれます。
・契約書に「〇月〇日から起算して」といった特別な定めがある場合は、その合意が優先され、初日からカウントされます。
・その他法令に規定がある場合や判例で初日を算入することとされている場合、初日からカウントされます。

このように、期間計算には一見単純そうに見えて、実は細かく複雑なルールが存在します。

とくに、契約の履行、クーリング・オフ、借金の時効、相続の熟慮期間など、法律が関わる重要な場面では、わずか1日の計算ミスが、権利を失うといった深刻な事態につながることも少なくありません。
「この契約書の期限はいつまでだろう?」 「時効が迫っているが、正確な満了日が分からない」

このような具体的な問題やお悩みがございましたら、ご自身だけで判断なさらず、ぜひ一度、法律の専門家である弁護士にご相談ください。