【弁護士が解説】裁判所から訴状が届いた!期日に出頭できない時の対処法と「放置」の危険性

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【弁護士が解説】裁判所から訴状が届いた!期日に出頭できない時の対処法と「放置」の危険性

裁判所から「訴状」が届いたら、どうしたらよい?
「裁判なんて初めてだ」、「仕事(や用事)があって指定された期日に行けない…」と不安になるのが普通です。

そのような場合、指定された期日に出頭できなくても、直ちに対応する方法があります
最も危険なのは、「どうしていいか分からない」と放置してしまうことです。

この記事では、裁判の期日に出頭できない場合にどうなるのか、そして具体的に何をすべきかを分かりやすく解説します。

1 【危険】裁判を無視・放置して出頭しないとどうなる?

期日に行けず、裁判所からの通知を放置した場合、どうなるのでしょうか。

まず、証人等とは異なり、当事者が民事裁判の期日に出頭しない場合、過料や罰金、拘留に処せられることはありません(民事訴訟法192条、193条参照)。

しかし、裁判所から訴状が届く場合、通常は期日呼出状が同封されていますが、期日呼出状を受領すると、法的には「呼出状の送達」(民事訴訟法94条1項)を受けたことになります。
「呼出状の送達」を受けた当事者が期日に欠席した場合、欠席に伴う不利益を受けることとなります(民事訴訟法94条2項)。

具体的には、初回期日に答弁書を提出することなく欠席した場合には、擬制自白(民事訴訟法159条3項)が成立し、原告が主張した事実が裁判所にそのまま認定され、当該事実を基に裁判所が判決を出すことになります。
また、2回目以降の期日に欠席をした場合も新たに主張された事実について擬制自白が成立する可能性があります。

関連記事:【放置は危険!】擬制自白とは?裁判で不利にならないための基礎知識を弁護士が解説

なお、自白の対象はあくまで事実であり、法的評価については自白の対象外であるところ、擬制自白が成立する場合でも原告の請求がすべて認められるわけではありません。

この点については、詳しくは以下の関連記事をご覧ください。

交通事故裁判、相手が無断欠席…こちらの請求は全て通る?「擬制自白」の仕組みと注意点
不倫相手が裁判を無視!慰謝料は請求額どおりもらえる?擬制自白と慰謝料額の裁判所判断を弁護士が解説

その他にも、期日に欠席した場合、以下のような不利益を受ける可能性があります。

・訴訟の遅滞によって生じた訴訟費用の負担(民事訴訟法63条)
・釈明が必要な攻撃防御方法の却下(民事訴訟法157条2項)
・不出頭の場合における証拠調べの実施(民事訴訟法183条)
・当事者尋問の尋問事項についての不利益な認定(民事訴訟法208条)
・当事者の欠席を理由とする証拠決定の取消し(神戸地裁昭和26年7月19日判決・下民 2巻7号923頁参照)

2 【対処法】初回の期日に出頭できない場合の対応

初回の期日は、訴訟を提起された被告の予定とは関係なく設定されているため、被告が裁判所に出頭できないということは少なくありません。
では、初回の期日に出頭できない場合、具体的にどうすればよいのでしょうか。

重要なのは、「出頭できない」としても「対応はする」ことです。

2.1 訴訟代理人を選任する【推奨】

訴訟代理人を選任することで、代理人に適切な答弁書の作成・提出から、裁判所への出頭まですべて任せることができます。

2.2 答弁書を提出する【必須】

訴状への反論を記載した「答弁書」を期限までに提出すれば、たとえ初回期日に欠席しても、答弁書を法廷で陳述したものとみなされます(民事訴訟法158条)。
これにより、「擬制自白」による敗訴を避けることができます。

関連記事:裁判で「陳述します」と言うのはなぜ? 訴状・答弁書・準備書面の「陳述」が持つ本当の意味

2.3 期日の変更を申し立てる

「顕著な理由」がある場合、裁判所に期日変更の申立てを行うことも可能です(民事訴訟法93条3項)。
ただし、必ず認められるとは限りません。

3 (参考)2回目以降の期日に出頭できない場合

初回の期日とは異なり、2回目以降の期日は、通常、裁判所と当事者(被告本人または代理人弁護士)の予定を調整した上で決定されます。
そのため、通常は「出頭できる日」で調整するため問題は生じません。

もっとも、急病、事故等によりやむを得ず期日に出頭できなくなることもあります。
そのような場合、期日変更の申立てを行うか、訴訟代理人を選任するかのいずれかの対応を取るべきこととなります。

2回目以降の期日の注意点
地方裁判所においては、2回目以降の期日では、たとえ準備書面(反論書面)を提出していても、欠席するとその書面を陳述したことになりません(陳述の擬制が適用されない。)。

そのため、準備書面を提出した場合でも欠席したときは、準備書面を提出しなかったのと同じ状況となります。

なお、簡易裁判所では、2回目以降の期日でも陳述が擬制されます(民事訴訟法277条、同158条)。

4 その他FAQ

Q
病気で当日行けなくなったら?
A

診断書等を添付し、期日変更の申立て
ただし、認められない可能性もあるため、訴訟代理人の選任も検討。

Q
初回だけ欠席しても大丈夫?
A

答弁書を期限内提出すれば「陳述みなし」で擬制自白を回避可能(158条)。
未提出の欠席は極めて危険

Q
会社員で平日出頭が難しい
A

裁判の期日は原則として平日のみ(民事訴訟法93条2項)。
そのため、平日の裁判対応が難しい場合には訴訟代理人の選任を検討すべき。

本記事で解説したように、裁判所の通知を「放置」することのリスクは計り知れません。
答弁書の提出には期限があり、対応が遅れれば遅れるほど、あなたにとって不利な結果となる可能性が高まります

ご自身で「どう対応すればいいか分からない」と悩んでいる間に、取り返しのつかない事態になる前に、まずはお早めに弁護士への法律相談をお勧めいたします。

関連裁判例(クリックすると開きます。)

神戸地裁昭和26年7月19日判決・下民 2巻7号923頁
「被告は右抗弁立証のため、唯一の証拠として、証人〇〇〇〇の尋問を申出で、当裁判所は同証人を尋問する旨の決定をなし、裁判長はその証拠調の期日を昭和〇〇年〇月〇日午後〇時と指定し、右決定ならびに命令は当日出頭した被告訴訟代理人に告知したが、民事訴訟法は昭和二三年法律第一四九号による改正後、当事者主義の原則によつて貫かれることになり、当事者本人尋問等若干の例外を除き、原則として職権による証拠調の制度は廃止され、証人の尋問も同法第二九四条により申出た当事者が先づ之を尋問すべく、裁判長の尋問は補充的な性質となり、証人尋問施行の全責任は当事者が負うことになつたが、このような権利と責任を持つ当事者がその申出た証人の尋問をすべき期日に、何等正当の事由もなく、反対の意思を表示することなく、出頭しないときは、証人が出頭したと否とを問わず、その当事者は最早やその証人の証拠調をする意思はないものと推測されるし、民事訴訟法第二六三条は裁判官の補充的権能を規定したにすぎないのであるから、かくの如き場合裁判所は進んで自ら尋問をすべきではなく、且その証拠調のためにのみ新期日を指定し、ために訴訟の遅延を来すおそれがある場合には同法第一三九条の精神に照して、その証人の尋問をすることなく審理を終結すべきである、と解すべきところ、被告本人も被告訴訟代理人も前記期日に出頭せず、同日裁判長は右期日を昭和〇〇年〇月〇日午前〇時半に延期し、その呼出状を同年〇月〇日当庁に於て、被告訴訟代理人に交付して送達したに拘らず、何等正当の事由もなく、被告本人其代理人はともに右期日にも出頭しなかつた。よつて被告は右証人の尋問をする意思がないものと推測され、且訴訟を遅延するおそれがあるので、唯一の証拠ではあるが当裁判所は右証人の証拠調をしないで口頭弁論を終結した。」

関連法令(クリックすると開きます。)

民事訴訟法第192条(不出頭に対する過料等)
1 証人が正当な理由なく出頭しないときは、裁判所は、決定で、これによって生じた訴訟費用の負担を命じ、かつ、十万円以下の過料に処する。
2 前項の決定に対しては、即時抗告をすることができる。

民事訴訟法第193条(不出頭に対する罰金等)
1 証人が正当な理由なく出頭しないときは、十万円以下の罰金又は拘留に処する。
2 前項の罪を犯した者には、情状により、罰金及び拘留を併科することができる。

民事訴訟法第94条(期日の呼出し)
1 期日の呼出しは、呼出状の送達、当該事件について出頭した者に対する期日の告知その他相当と認める方法によってする。
2 呼出状の送達及び当該事件について出頭した者に対する期日の告知以外の方法による期日の呼出しをしたときは、期日に出頭しない当事者、証人又は鑑定人に対し、法律上の制裁その他期日の不遵守による不利益を帰することができない。ただし、これらの者が期日の呼出しを受けた旨を記載した書面を提出したときは、この限りでない。

民事訴訟法第159条(自白の擬制)
1 当事者が口頭弁論において相手方の主張した事実を争うことを明らかにしない場合には、その事実を自白したものとみなす。ただし、弁論の全趣旨により、その事実を争ったものと認めるべきときは、この限りでない。
2 相手方の主張した事実を知らない旨の陳述をした者は、その事実を争ったものと推定する。
3 第一項の規定は、当事者が口頭弁論の期日に出頭しない場合について準用する。ただし、その当事者が公示送達による呼出しを受けたものであるときは、この限りでない。

民事訴訟法第63条(訴訟を遅滞させた場合の負担)
当事者が適切な時期に攻撃若しくは防御の方法を提出しないことにより、又は期日若しくは期間の不遵守その他当事者の責めに帰すべき事由により訴訟を遅滞させたときは、裁判所は、その当事者に、その勝訴の場合においても、遅滞によって生じた訴訟費用の全部又は一部を負担させることができる。

民事訴訟法第157条(時機に後れた攻撃防御方法の却下等)
1 当事者が故意又は重大な過失により時機に後れて提出した攻撃又は防御の方法については、これにより訴訟の完結を遅延させることとなると認めたときは、裁判所は、申立てにより又は職権で、却下の決定をすることができる。
2 攻撃又は防御の方法でその趣旨が明瞭でないものについて当事者が必要な釈明をせず、又は釈明をすべき期日に出頭しないときも、前項と同様とする。

民事訴訟法第208条(不出頭等の効果)
当事者本人を尋問する場合において、その当事者が、正当な理由なく、出頭せず、又は宣誓若しくは陳述を拒んだときは、裁判所は、尋問事項に関する相手方の主張を真実と認めることができる。

民事訴訟法第183条(当事者の不出頭の場合の取扱い)
証拠調べは、当事者が期日に出頭しない場合においても、することができる。

民事訴訟法第158条(訴状等の陳述の擬制)
原告又は被告が最初にすべき口頭弁論の期日に出頭せず、又は出頭したが本案の弁論をしないときは、裁判所は、その者が提出した訴状又は答弁書その他の準備書面に記載した事項を陳述したものとみなし、出頭した相手方に弁論をさせることができる。

民事訴訟法第93条(期日の指定及び変更)
1 期日は、申立てにより又は職権で、裁判長が指定する。
2 期日は、やむを得ない場合に限り、日曜日その他の一般の休日に指定することができる。
3 口頭弁論及び弁論準備手続の期日の変更は、顕著な事由がある場合に限り許す。ただし、最初の期日の変更は、当事者の合意がある場合にも許す。
4 前項の規定にかかわらず、弁論準備手続を経た口頭弁論の期日の変更は、やむを得ない事由がある場合でなければ、許すことができない。

民事訴訟法第54条(訴訟代理人の資格)
1 法令により裁判上の行為をすることができる代理人のほか、弁護士でなければ訴訟代理人となることができない。ただし、簡易裁判所においては、その許可を得て、弁護士でない者を訴訟代理人とすることができる。
2 前項の許可は、いつでも取り消すことができる。

民事訴訟法第277条(続行期日における陳述の擬制)
第百五十八条の規定は、原告又は被告が口頭弁論の続行の期日に出頭せず、又は出頭したが本案の弁論をしない場合について準用する。