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期日請書とは?民事訴訟法94条2項ただし書との関係性について弁護士が解説
民事裁判を起こした後、裁判所から「期日請書(きじつうけしょ)」という書類の提出を求められることがあります。
「これは一体何のための書類?」、「提出すると、どんな意味があるの?」と疑問に思う方もいらっしゃるでしょう。
一言で言うと、期日請書は「裁判所から指定された期日を、確かに聞きました」と返事をするための大切な書類です。
これを提出したにもかかわらず裁判を欠席してしまうと、訴えが取り下げられたとみなされるなど、大きな不利益を受ける可能性があります。
この記事では、期日請書の役割と、その法的な意味について、民事訴訟法のルールとあわせて分かりやすく解説します。

1 そもそも期日請書って何?なぜ提出が必要?
裁判を起こすと、まず第1回目の裁判の日時(口頭弁論期日)が決められます。
このとき、訴えられた被告には、訴状などと一緒に「呼出状」という正式な手紙が送られます。
一方、訴えを起こした原告には、実務上、電話などで日程が伝えられるのが一般的です。
しかし、電話での連絡だけでは期日について連絡したか否かについて事後的に確認することはできません。
そこで、裁判所は、原告に対し、「指定された期日を確かに確認し、その日に裁判所へ行きます(出頭します)」という意思表示を書面で提出してもらうのです。
この「裁判所への返事の書面」が「期日請書」です。
「期日請書」には、通常、①期日の連絡を受けたこと、②その期日に出頭することを記載します。
2 裁判のルールと期日請書の「本当の意味」
民事訴訟法では、当事者が裁判を欠席した場合に何らかの不利益(ペナルティ)を課すためには、原則として、
・呼出状を送達する
・裁判所に出頭した当事者に、その場で次回の期日を告げる
のいずれかの方法による「呼出し」が必要だと定められています(民事訴訟法94条2項)。
先ほど説明したように、原告には通常、呼出状は送られません。
では、なぜ電話連絡だけでペナルティの対象になるのでしょうか?
ここで登場するのが、期日請書です。
民事訴訟法には、上記原則の例外が定められています。
民事訴訟法94条ただし書
「ただし、これらの者が期日の呼出しを受けた旨を記載した書面を提出したときは、この限りでない。」
これは、簡単に言うと、「『期日について聞きました』という書面(=期日請書)を本人が提出したなら、正式な呼出状を送っていなくても、欠席した際のペナルティを課すことができますよ」という意味です。
そのため、期日請書を提出した後に期日に欠席すると、欠席に伴う不利益を課される状況となるのです。
3 もし期日請書を提出した後に欠席するとどうなる?
原告が欠席した場合のペナルティ
当事者双方が2回連続で期日に欠席した場合や、欠席後1ヶ月以内に次の期日を指定する申し立てをしない場合、その訴えは「取り下げられたもの」とみなされてしまいます(民事訴訟法263条)。
つまり、せっかく起こした裁判が、そこで強制的に終了することになります。
被告が欠席した場合のペナルティ
被告が答弁書などを提出せずに最初の期日を欠席すると、原告の主張(訴状に書かれている内容)を全て認めたものとみなされ、原告勝訴の判決が言い渡される可能性があります(これを「擬制自白」と言います)。
擬制自白については、以下の関連記事をご覧ください。
関連記事:【放置は危険!】擬制自白とは?裁判で不利にならないための基礎知識を弁護士が解説()
4 まとめ:期日請書は単なる日程確認ではない
この記事では、期日請書の役割と法的な意味について解説しました。
・期日請書は、裁判期日を確かに了承したことを裁判所に伝えるための書面。
・これを提出すると、正式な「呼出し」があったのと同じ効果が生じる。
・提出後に欠席すると、訴えが取り下げられたものとみなされたり、敗訴といった重大な不利益を受ける可能性がある。
期日請書は、単なる日程確認の返信書ではありません。あなたの裁判上の立場を左右する、法的に重要な意味を持つ書類です。
裁判所から提出を求められた際は、指定された期日に必ず出頭できるかを確認し、責任をもって対応するようにしましょう。
※本記事では期日請書の法的根拠、提出した場合の効果について解説いたしました。
しかし、実際の事案では個別具体的な事情により法的判断や取るべき対応が異なることがあります。
そこで、法律問題についてお悩みの方は、本記事の内容だけで判断せず弁護士の法律相談をご利用いただくことをお勧めいたします。
民事訴訟法第137条(裁判長の訴状審査権)
1 訴状が第百三十四条第二項の規定に違反する場合には、裁判長は、相当の期間を定め、その期間内に不備を補正すべきことを命じなければならない。民事訴訟費用等に関する法律(昭和四十六年法律第四十号)の規定に従い訴えの提起の手数料を納付しない場合も、同様とする。
2 前項の場合において、原告が不備を補正しないときは、裁判長は、命令で、訴状を却下しなければならない。
3 前項の命令に対しては、即時抗告をすることができる。
民事訴訟法第139条(口頭弁論期日の指定)
訴えの提起があったときは、裁判長は、口頭弁論の期日を指定し、当事者を呼び出さなければならない。
民事訴訟法第263条(訴えの取下げの擬制)
当事者双方が、口頭弁論若しくは弁論準備手続の期日に出頭せず、又は弁論若しくは弁論準備手続における申述をしないで退廷若しくは退席をした場合において、一月以内に期日指定の申立てをしないときは、訴えの取下げがあったものとみなす。当事者双方が、連続して二回、口頭弁論若しくは弁論準備手続の期日に出頭せず、又は弁論若しくは弁論準備手続における申述をしないで退廷若しくは退席をしたときも、同様とする。
民事訴訟法第94条(期日の呼出し)
1 期日の呼出しは、呼出状の送達、当該事件について出頭した者に対する期日の告知その他相当と認める方法によってする。
2 呼出状の送達及び当該事件について出頭した者に対する期日の告知以外の方法による期日の呼出しをしたときは、期日に出頭しない当事者、証人又は鑑定人に対し、法律上の制裁その他期日の不遵守による不利益を帰することができない。ただし、これらの者が期日の呼出しを受けた旨を記載した書面を提出したときは、この限りでない。