【弁護士が解説】本人限定受取郵便の選び方|3つの種類を比較。特定事項伝達型は個人で使える?
【この記事で解決できること】
契約書や示談書など、重要な書類を「確実に相手本人に届けたい」と考えたとき、選択肢に挙がるのが「本人限定受取郵便」です(通常は簡易書留や一般書留で十分ではあります。)。
しかし、本人限定受取郵便には「基本型」「特例型」「特定事項伝達型」の3種類があり、 「自分のケースではどれを選べばいいのだろう?」、「一番厳格そうな特定事項伝達型を個人で送ることはできるの?」といった疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
この記事では、法律の専門家が、本人限定受取郵便の3つの種類の特徴と違い、そしてそれぞれの利用シーンに合わせた最適な選び方を分かりやすく解説します。

【目的に合わせた選び方】
まず結論からお伝えすると、利用シーンごとにおすすめの方式は以下のとおりです。
・個人間で重要な書類(契約書など)を送る場合
「基本型」または「特例型」を選びましょう。相手に郵便局窓口で受け取ってもらうか、自宅で受け取ってもらうかなどによって使い分けます。
・金融機関などが法律上の本人確認手続きとして送る場合
「特定事項伝達型」が利用されます。
これは法律(犯罪収益移転防止法)等で求められる厳格な本人確認を金融機関等に代わって日本郵便が行うことを目的としたサービスです。
・個人が「特定事項伝達型」を利用できるか
制度上は可能ですが、料金後納契約などを行う必要があるため、個人の利用にはハードルがあります。
それでは、それぞれの詳細について見ていきましょう。
1 本人限定受取郵便とは?~基本の仕組み~
本人限定受取郵便は、郵便物を名宛人又は差出人が指定した代人1人に限り受け取ることができる郵便物です。
一般にクレジットカードやキャッシュカードなどの重要な物品を郵送する際に、確実に名宛人へ送付するために利用されていますが、個人間で重要な書類を送付する際などにも利用されることがあります。
本人限定受取郵便は、名宛人宛てに「到着通知書」が送付され、名宛人は「到着通知書」を郵便局の窓口へ持参するなどした上、本人確認書類を提示して本人確認を行うことで郵便物を受け取ることができます(日本郵便株式会社「内国郵便約款」139条)。
本人限定受取郵便には、受取方法や本人確認の厳格さ、差出人への情報提供の有無が異なる3つ(基本型、特例型、特定事項伝達型)の方式が存在します。
関連リンク:内国郵便約款|日本郵便Webサイト
2 3つの種類を比較!「基本型」、「特例型」、「特定事項伝達型」
本人限定受取郵便のうち基本型、特例型、特定事項伝達型を比較すると以下のとおりとなります。
本人確認の方法は、特定事項伝達型が最も厳格です。基本型と特例型では、受け取り場所や本人確認で提示できる書類の種類が異なります。
基本型 | 特例型 | 特定事項伝達型 | |
---|---|---|---|
郵便物の受領場所 | 郵便窓口 | 郵便窓口または名宛人本人 | 郵便窓口または名宛人本人 |
本人確認書類 | 以下のいずれか。 ・写真付き公的証明書1点 ・写真のついていない公的証明書または写真付き職員証、学生証等2点 | 公的証明書1点 | 写真付き公的証明書1点 |
本人確認書類以外の必要書類 | ・到着通知書 | ・到着通知書 (郵便局で受け取る場合) | ・到着通知書 (郵便局で受け取る場合) |
差出人が指定した代人による受領 | 〇 | 〇 | × |
転送の有無 | 〇 (転送不要)と記載しない限り転送される | 〇 (転送不要)と記載しない限り転送される | × |
差出人への通知 | × | × | 以下の情報が日本郵便のWebサイトからダウンロード可能。 ・本人確認書類の名称 ・本人確認書類の記号番号(法令等により、利用が制限されているものを除く。) ・本人確認書類に記載されている名あて人の生年月日 ・本人確認を行った者の氏名 ・本人確認書類の提示を受けた日時 |
関連リンク:
・本人限定受取郵便|日本郵便Webサイト
・内国郵便約款|日本郵便Webサイト
3 「特定事項伝達型」は個人でも出せる?
本人限定受取郵便の中で本人確認が一番厳格な「特定事項伝達型」郵便は個人でも出すことが可能でしょうか。
日本郵便の約款上、個人が「特定事項伝達型」の本人限定受取郵便を差し出すことは禁止されていません。
しかし、「特定事項伝達型」を差し出すには料金後納(料金計器別納を含む)とする必要があります。
料金後納郵便とするには、以下の条件を満たす必要があります。
・郵便物、荷物を毎月50通(個)以上差し出す。
・事前に料金後納の承認を受ける。
・1か月間に差し出す郵便物、荷物の料金等の概算額の2倍以上に相当する担保を提供する。
そのため、個人が「特定事項伝達型」の本人限定受取郵便を差し出すことは制度上は不可能ではないものの、一般に個人の方は料金後納制度を利用する条件を満たさないことから、現実的には利用が困難といえます。
なお、「特定事項伝達型」は犯罪収益移転防止法と密接に関連する郵便制度です。詳しくは以下のリンクをご参照ください。
関連リンク:行政相談を端緒とした改善要請|総務省中部管区行政評価局
4 まとめ:最適な方法を選び、重要書類を確実に届けよう
今回は、本人限定受取郵便の3つの種類と、その選び方について解説しました。
記事の内容を簡単にまとめると以下のとおりです。
・個人間の重要書類を送付する際、通常は簡易書留、一般書留で十分。
・ただし、厳格に送付しなければならない事情がある場合には、相手の状況に合わせて「基本型」か「特例型」の本人限定受取郵便を利用することを検討する。
・「特定事項伝達型」は、主に事業者が法律上の本人確認に用いる専門的なサービスであり、個人での利用は現実的ではない。
重要な書類を送る際は、この記事を参考に、その重要度や相手の受け取りやすさを考慮して最適な方法を選択してください。
関連リンク:
・料金後納|日本郵便Webサイト
※本記事では「本人限定受取郵便とは?特定事項伝達型は個人でも発送可能か?」について解説いたしました。
しかし、実際の事案では個別具体的な事情により法的判断や取るべき対応が異なることがあります。
そこで、法律問題についてお悩みの方は、本記事の内容だけで判断せず弁護士の法律相談をご利用いただくことをお勧めします。