状況
Uさんの夫は、生前、消費者金融から借金した上で返済を長年続けていました。
最終的に夫は完済に至らないまま亡くなったのですが、相続発生時の夫名義の借金は数百万円となっていました。
夫にはプラスの財産がなく、また高齢のUさんのパート収入では夫の借金を返済できる見通しも立たなかったから、Uさんは相続放棄をしたいと考え当事務所の弁護士にご相談されました。
弁護士の活動
1 方針の決定
Uさんは速やかに相続放棄を行うことを希望していたのですが、弁護士がUさんから話を聞いたところ、夫は平成13年頃から消費者金融からの借金を継続的に返済していたことがわかりました。
平成13年頃からの借入れとなると過払金が発生している可能性があったことから、Uさんと相談の上、ひとまずは夫の債務を調査し、債務超過であることが確認できた場合に相続放棄を行うこととしました。
2 相続財産の調査
弁護士は、夫が債務を弁済していた数社の消費者金融に対し過去の全取引履歴の開示を請求しました。
開示された取引履歴をもとに引き直し計算を行った結果、消費者金融のうち1社に対過払金返還請求権が発生しており、他社に対する債務を差し引いたとしても100万円以上がUさんの手元に残る計算となることが判明しました。
そこで、Uさんは、相続放棄を行うことなく相続を承認し、返還された過払金の中から債務を弁済することとしました。
3 過払金の請求
弁護士が消費者金融に対し過払金返還請求を行った結果、最終的に百数十万円を獲得でき、他社に対する債務を全額弁済してもUさんの手元に100万円以上が残ることとなりました。
ポイント
1 過払金の調査の必要性
被相続人が多額の借金を抱えたまま亡くなった場合、相続人が特段の財産調査を行わずに相続放棄をすることが少なくありません。
実際、被相続人と相続人の間に生前に交流があり、相続人が被相続人の財産状況をある程度把握していたという場合には、財産調査を行う必要がないことがほとんどではあります。
しかし、相続人が被相続人の財産状況をあまり把握していなかった場合はもちろんですが、被相続人に消費者金融からの借金があるという場合でも、被相続人は実際には債務超過ではなく借金の額を上回る資産を保有していた可能性があります。
これは、被相続人が消費者金融から長年にわたり借り入れをしていた場合、被相続人は消費者金融に対する過払金返還請求権を有していた可能性があるためです。
具体的には、理論上は平成22年6月17日以前に開始された取引については過払金が発生している可能性がありますので、被相続人が同日以前より消費者金融から借入れを行っていたという場合には、まずは債務に係る取引履歴の調査を行うことを検討すべきです。
今回のケースでは、被相続人が平成13年頃から消費者金融から借入れを行っていた事案であり、過払金が発生している可能性が高い状況でした。
そこで、相続放棄の前に財産調査を先行させた結果、Uさんは100万円以上が手元に入ってくることとなりました。
※掲載中の解決事例は、当事務所で御依頼をお受けした事例及び当事務所に所属する弁護士が過去に取り扱った事例となります。