遺産分割に関するQ&A
遺産分割に関するQ&A
兄弟姉妹に養子がいる場合、兄弟姉妹の相続人に養子も含まれる?
Question
兄が亡くなったのですが、兄はずっと独身で子供もいませんでした。
また、両親はともに数年前にすでに亡くなっています。
そのため、私を含めきょうだいが兄の相続人になると思うのですが、きょうだいの中に父の養子が1名います。
父の養子であるきょうだいも兄の相続人になるのでしょうか。
Answer
養子縁組により養親の実子と養子は法的にきょうだいとなるため、養子も兄弟姉妹として他の実子と同様に相続人となります。
養子の法定相続分は、被相続人である実子の父母双方と親子関係を有するか、実子の父母のうち一方のみと親子関係を有するかにより変動しますが、後者の場合の法定相続分は前者の場合の2分の1です。
なお、養子の子が代襲相続人になる場面とは異なり、養子縁組と兄弟姉妹の出生の前後関係は問題となりません。
養子が実子である兄弟姉妹の相続人になるかどうかについて、より詳しくお知りになりたい方は以下をご覧ください。
1 養子も実子であるきょうだいの相続人になり得るか?
1.1 養子縁組後の親族関係
養子縁組すると、養親と養子の間に法的な親子関係が生じます(民法第809条)。
また、養親の実子と養子との間には、養子縁組の日から血族間におけるのと同一の親族関係が発生します。
つまり、養子縁組の成立に伴い、養子と実子は法的にきょうだいとなります。
民法
第809条
養子は、縁組の日から、養親の嫡出子の身分を取得する。
第727条
養子と養親及びその血族との間においては、養子縁組の日から、血族間におけるのと同一の親族関係を生ずる。
1.2 養子も実子であるきょうだいの相続人となるか?
実子と養子が法的にきょうだいとなる以上、たとえば実子である兄に子供がおらず、両親もすでに他界しているという場合には、その他の実子と同様に養子も相続人になります(民法第889条1項2号)。
民法
第887条
1 被相続人の子は、相続人となる。
2 被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。
3 前項の規定は、代襲者が、相続の開始以前に死亡し、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その代襲相続権を失った場合について準用する。
第889条
1 次に掲げる者は、第八百八十七条の規定により相続人となるべき者がない場合には、次に掲げる順序の順位に従って相続人となる。
一 被相続人の直系尊属。ただし、親等の異なる者の間では、その近い者を先にする。
二 被相続人の兄弟姉妹
2 第八百八十七条第二項の規定は、前項第二号の場合について準用する。
2 養子の法定相続分
2.1 兄弟姉妹の法定相続分
兄弟姉妹の法定相続分は平等ですが、いわゆる半血きょうだい(父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹)の法定相続分は全血きょうだい(父母を同じくする兄弟姉妹)の2分の1とされています(民法900条1号)。
民法
第900条
1 同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。
一 子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各二分の一とする。
二 配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、三分の二とし、直系尊属の相続分は、三分の一とする。
三 配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、四分の三とし、兄弟姉妹の相続分は、四分の一とする。 四 子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。
2.2 養子の法定相続分
民法では、「配偶者のある者が未成年者を養子とするには、配偶者とともにしなければならない。」(民法795条)と規定されています。
しかし、婚姻していない者が養子縁組することや、婚姻している者が成年者と単独で養子縁組することなどは制限されていません。
そのため、養子が養父または養母のみと養子縁組を行う場合が存在するところ、養子が養父または養母のみと養子縁組を行う場合、養子が半血きょうだいとして、全血きょうだいの法定相続分の2分の1とされる可能性があります。
具体的には、以下のとおり整理することが可能です(なお、①~⑤の状況を前提としております。)。
養子が養父の配偶者の実子である場合
この場合、養父と配偶者の実子である被相続人(実子A)と養子は全血きょうだいということになります。
そのため、養子と実子の法定相続分はそれぞれ2分の1という計算になります。
養子が養父の配偶者の実子でなく、養子でもない場合
この場合、養父と配偶者の実子である被相続人(実子A)と養子は半血きょうだいということになります。
そのため、養子の法定相続分が3分の1となるのに対し、実子の法定相続分はそれぞれ3分の2となります。
前提とする状況
①養子が養父のみと養子縁組
②養父と配偶者の間に実子AとBが存在
③実子Aに相続が発生
④養父と配偶者はいずれも実子Aよりも先に死亡
⑤実子Aに直系尊属なし
3 養子縁組と兄弟姉妹の出生の先後関係は問題になる?
養子の子は、養子縁組後に出生していない限り、養親や養親の血族と親族関係になることはありません(民法第727条)。
そのため、養子の子は、養子縁組後に出生していない限り養親の代襲相続人となることや養親の子(養子のきょうだい)の代襲相続人となりません(民法第887条2項ただし書、889条2項)。
このように、養子の子が代襲相続人となるには当該養子の子が養親と養子の養子縁組後に出生している必要がある関係で、「養子が兄弟姉妹の相続人となる場合も養子縁組と兄弟姉妹の出生の先後関係が問題になる」と認識されている方もおられます。
しかし、養子縁縁組により養親と養子の間に法的な親子関係が成立し、養親の子と養子は法的にきょうだいとなります。そのため、法定相続人を決定する際に、養子縁組と兄弟姉妹の出生の先後関係は問題にはなりません。
民法
727条
養子と養親及びその血族との間においては、養子縁組の日から、血族間におけるのと同一の親族関係を生ずる。
887条
1 被相続人の子は、相続人となる。
2 被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。
3 前項の規定は、代襲者が、相続の開始以前に死亡し、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その代襲相続権を失った場合について準用する。
889条
1 次に掲げる者は、第八百八十七条の規定により相続人となるべき者がない場合には、次に掲げる順序の順位に従って相続人となる。
一 被相続人の直系尊属。ただし、親等の異なる者の間では、その近い者を先にする。
二 被相続人の兄弟姉妹
2 第八百八十七条第二項の規定は、前項第二号の場合について準用する。
※本記事では兄弟姉妹の中に養子がいる場合に誰が相続人となるかに関するポイントをご紹介いたしました。
しかし、実際の事案では個別具体的な事情により法的判断や取るべき対応が異なることがあります。
そこで、相続問題についてお悩みの方は、本記事の内容だけで判断せず弁護士の法律相談をご利用いただくことをお勧めします。